永遠回帰

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私のシュタイナー

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 一昨年の夏くらいに、はじめて「神秘学概論」を読んだとき、まったく意味が分からなかった。けど、色々と勉強を進めながらシュタイナーの言っていることの意味が分かりはじめたとき、これはなにか、とても大切なことを言っていると直感的に感じた。
 
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シュタイナーを深く愛している高橋巌さんの翻訳の力もあるのだと思う。シュタイナーの本に専門的な用語は出てこないが(「自由の哲学」で哲学用語がいくらか出てくるが)細かいニュアンスまで拾って言葉を選んでいるのが分かる。
 
 
 
 シュタイナーの著作には、読んだら悩みが解決するとか、なにか自分を肯定してくれることが書いてあるとか、そんな要素は一切ない。むしろ厳密な思考の過程や、日々の修行を重視する。
 
霊的な世界と向き合うことの大切さを説いているが、それはあくまで科学的に物質世界と向き合うのと同じような真摯さであるべきだと主張する。霊的な世界は一歩間違えれば誤謬に陥るが、それは科学であっても同じことで、今の人間は科学の方を信奉してしまっている状態に過ぎない。
 
 

 正直に言うと、霊的合一なんてのは高度すぎてよほどの求道者でない限り、そこまで熱心に求めないのではないか。それに、後アトランティス期以前(今の人間が把握してる歴史以前)の宇宙観まで本気で知ろうとする人はもっと少ないと思う。それでも私は、そこまで知らなければ人間存在の本質を知りえないという意見に同感する。ただ、同じ山を違う場所から登っても同じ頂上にたどり着くように、方法は無数にあると思う。
 

霊的な世界に心を開いていく上で、基盤となるような考え方が必要だという意味ではシュタイナーの思想は有効だ。本を読んで自我が分裂したり、頭がおかしくなってしまうことはないと思うので、負荷やリスクも低い。人に対する価値判断を削ぎ落としていくことや、一つの形象に没頭することなど、多くは至って単純かつ日常的な生活の中で実践出来ることが多い。
 
 
 
 生きていく上で重要なことは、例えばこんな風に分けることができるかもしれない。物質世界といかに向き合うかというか。今自分が生きているこの時代や社会とどう向き合うか。私たちの魂や霊性というものとどう向き合えばいいのか。
 
これは、どれが大切でどれが大切でないという問題ではない。どれも大切だ。シュタイナーはその全てと向き合おうとした。シュタイナーの霊視のヴィジョンも面白いが、そういう彼の姿勢そのものにも心を打たれる。霊視の内容にしろ、活動の内容にしろ、何もかも完璧だったということはありえない。時代背景的にも、第一次世界大戦の勃発、学問や教育の危機などに対して、人間的な感情や怒りも強く覚えていたのではないかと私は思う。ユングも偉大だったし、学ぶことは多いけども、現代にその思想を活かそうと思うときに、見習う部分がシュタイナーのほうが多いと私は思ってる。
 
  
 
 シュタイナーの思想を現代社会に活かす上で、完全にそのままでは当てはまらない。社会有機体の考えは有効だが、もっと現代の状況や、日本人の特性に合わせた解説があってもいいかもしれない。 

あたかもシュタイナーをとても読み込んでいるような印象を与えてるかもしれないけど、全然そんなことはない(「ミュンヘンの小学校」でシュタイナー教育が広まるきっけを作った子安美知子さんですら、「全貌はまだまだ掴めない」と先日とある場で仰っていたのだから、たかだか二年近くでは序の口にも満たない)。
 
かなり幅広いことに関心を向けて読書(哲学、倫理、政治、社会問題、教育、アート等)をしているので、集中してシュタイナーだけに取り組むことはできていないが、そろそろ今まで読んだものを再読して考えを深めていきたい。 
 
 

 ちなみに、シュタイナー絡みの解説書では、フランシス・エドマンズの「考えることから生きることへ」、子安美知子の「モモを読む」、高橋巌さんの「シュタイナー哲学入門 もう一つの近代思想史」がお勧めです。
 
それから、コリン・ウィルソンの「ルドルフ・シュタイナー その人物とヴィジヨン」もいいかもしれない。読書が得意な人は、はじめから「神秘学概論」を読むことをお勧めです。